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先日、山陰への旅の途中、珍しく安来市へ寄り道をしました。
ハガネの町で有名な安来市に、和鋼博物館なる施設を偶然発見し、見学することができましたので、そのお話です。
中国山地は良質の砂鉄と豊かな森林資源に恵まれ、古くからたたら製鉄が盛んな地域でした。江戸時代の後半には国内総生産量の約80%を占めたとされています。
良質の真砂砂鉄が豊富な中国山地。それを原料に「たたら」で生産されるのが「和鋼」です。その中でも最も質的に優れたものに、「玉鋼」という美称がつけられています。
多くの人々を魅了する日本刀は、わが国の伝統的匠技によって制作される世界に誇る鋼の芸術品。
玉鋼はこの日本刀の制作に欠くことのできない重要な素材です。
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話はちょっと逸れますが、中国山地で仕事をする中で、明らかに人為的に出来上がった地形というものが見受けられる場所があります。
若い頃はこの地形が理解出来ず、不思議なもんだな~と思ってました。
うまく説明出来ませんが、50~100メートル四角の正方形でたとえた場合、中に高さが10メートル程度の山が何個か有り、谷も有る。大きな箱庭バージョンと表現したら良いですかね。これが土を取った場所じゃないかと思ってます。
江戸時代、この安来は周辺山間部のたたらで生産される鉄の積出港として繁栄した歴史を持っています。ここから全国の刃物産地へ多くの素材が出荷され、各地域の産業の発展を支えました。
しかし、明治期になると、近代製鉄法の普及によって「たたら製鉄」は衰退期を迎えますが、この安来は良質な原料と伝統的な技術に改良がなされ、優れた鋼の生産地として生まれ変わり、世界的にも著名なハガネ生産の町となりました。安来は昔も今も優れた鋼の供給地として重要な役割をはたしています。
施設内には、たたら製鉄には欠かせない足踏み式の「天秤ふいご」があります。これは中国地方で発達した独創的な送風装置です。江戸時代初期に発明されたこの装置は、明治時代になるまで活躍し、中国山地のたたら製鉄による生産量を飛躍的に増大させました。
これはジブリ映画もののけ姫の重要な部分を占め、現存する島根県雲南市菅谷たたらが舞台になってるようですね。
ふいごを踏むのはかなりの重労働のため、番子(ばんこ)と呼ばれる踏み手が順番に交代で踏んだそうです。かわりばんこの語源となっているそうです。
体験用の天秤ふいごも展示してあるので、ぜひ体験してみることをお勧めします。
また映像ホールや展示室も数多くあり、とても勉強になる施設です。
中国山地の新たな魅了に触れてみてください。
でも、もののけ姫で描かれた自然破壊に見えるこの産業。その後の荒れ地に蕎麦が撒かれたことで、日本三大蕎麦といわれる出雲蕎麦が出来上がったのも、不思議といえば不思議ですかね。